リーダー感覚

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(なお、校正前の原稿をもとに作成しているため、実際の本とは若干違いがあることをご留意ください)



読者の声

是非、手元において置きたい一冊です, 2007/2/6
By むっちゃん (京都府京都市)

私は会社を経営しているのですが、部下を指導するのは大変です。

今までいろいろ試してみたのですが、なかなか上手くいかない。

このご本に出会って、頭か指導しようとしていた自分の考えが変わりました。

「まずほめる事からはじめる」誰でもが分かっていそうで分からない事を丁寧に解説してあり、ずっと手元において置きたい1冊です。

「ほめる」といってもただほめるのではなく、相手に応じた効果的なほめ方があるというのが大変勉強になりますね。

既にリーダーとして活躍されている方は1つステップアップするのに、これからリーダーになられる方には、まさにうってつけだと思います。

私は、このご本に出会って、それを実行することにより、1つステップアップした経営者になれると信じています。

内容紹介

リーダー感覚とは何か?

 リーダー感覚とは聞きなれない言葉だと思います。しかし、難しいことではありません。リーダー感覚とは「リーダーをしていることが楽しい」「人を指導することが楽しく、うれしい」という感覚のことです。なあんだと思われるかもしれません。でも、これはとても重要なことなのです。リーダーをやっていて楽しくなかったら、なんでリーダーになる必要があるでしょうか。

 どんな職業でも、楽しいと思えなかったら長続きしませんし、成功できません。ですから、リーダーとしての適格性を判断するうえで、リーダー感覚があるかどうかは、最良の判断基準になるはずなのです。

 ところで、世間一般でリーダーを選ぶにあたって、私の言うリーダーの適格性が、はたしてどれくらい真面目に論議されているでしょうか。正直のところ、危うい限りだと私は思っています。おおかたは「これまで真面目に務めてきているんだから、任せてもまあ大丈夫だろう。やらせてみよう」といった程度ではないでしょうか。

 そういう人たちが、企業内外のリーダー研修にやってきたとき、リーダーとしての適格性が試されることはまずありません。それはすでに前提なのです。適格者だという前提の下に、いろいろなリーダーシップ理論が講義されていくわけです。しかし、リーダーとして適格でない人がいくらリーダーシップを学んでも、意味がないことは明らかです。

 本書では、このリーダーの適格性という問題を真正面から取り扱っています。ただ、私自身は、これはそれほど難しい問題だとは思っていません。基本的には誰でもリーダーになれると信じています。ただし、それはあくまで条件つきです。ほとんどの人は、リーダー適格者となるために、もっと勉強しなければいけません。

 そこで、本書では、リーダー適格者となるためのリーダー感覚訓練法と、それに必要な知識を提供していくつもりです。この訓練によって、読者はリーダー適格者、つまり、人を指導することに喜びを感じられるリーダーになれるのです。

 しかも、都合がよいことに、この訓練を行いますと、ほかのリーダーシップ理論を勉強するとき、大きな相乗効果が得られます。

 具体的には、この訓練がもたらす効果は、以下の三つです。

 第一に、人間に関心がもてるようになります。その結果、人間に対する観察力が養成されます。

 第二に、相手の反応が理解できるようになります。つまり、相手の行動を分析でき、相手の行動特性がつかめるようになります。

 第三に、相手との共感が得られるようになります。これはコミュニケーションの原点です。

 要するに、リーダー感覚を高める訓練によって、まわりの人に関心がもてるようになり、人間に対する理解力が格段に進歩するわけです。リーダーは人に仕事をしてもらって、成果をあげるのが任務ですから、まわりの人のことが理解できなかったらどうにもなりません。それを無理なくできるようにするのがリーダー感覚の訓練といえます。

 本書のリーダー感覚の訓練には、もうひとつ大きな特徴があります。この訓練を行うと、リーダーとしての行動力が自然に身につくのです。

 人を束ね、組織の成果をあげるためには、リーダーとしての行動力が身についていなければなりません。そのためにリーダーシップ理論をいろいろと学ぶわけですが、知識というのは案外弱いものです。

 知識は行動力が伴ってこそ、その効果を発揮するのです。そこで、本書の訓練法では、「体を使ってリーダー感覚を身につける」ことを主眼に設計されています。身・口・意の働きすべてを用いるように訓練が考えられています。したがいまして、本書のリーダー感覚訓練を続けていけば、いつの間にかリーダーとしての行動力がつくことは間違いありません。

 本書で紹介しているリーダー感覚の訓練方法については、私が自分自身で試み、またいろいろな人に試していただいております。ですから効果はすでにテストされています。

 本書の訓練内容は、最初はそれほど難しいものではありません。誰でもできます。ただ、読むに従い、内容はかなり高度になっていきます。ですから、実際には相当奥が深いものだと私は思っています。

 みなさんがこの訓練を毎日続けていかれれば、「いつの間にか、ずいぶん高いところまで登ってきたんだな」と感じるときがくるはずです。さあ、みなさん、私と一緒にリーダー感覚の山に登りましょう。

序章 リーダー感覚の必要性

◆感覚とは快を感じること  

 どんな仕事でも、スポーツでも、趣味でも、あるいは家事でも、原理は同じです。進歩するためには、感覚がないとダメなのです。

 その感覚とはいったいどういうものなのでしょうか。私は、快を感じられるかどうかだと思っています。感覚イコール快ということですね。

 ラーメン屋の店主なら、ラーメンがうまいと感じることが必要であり、画家なら、ものを見て美しいと感じることが不可欠です。舌の感覚が育っていない人に、いくら熱心に料理を教えても、お客さんを呼べる味は出せませんし、美しいものに快を感じない人に、どんなに高度な技術を教えたところで、しょせんは素人の絵しか描けません。  

 このことはどんな職業についてもいえます。優秀な技術者や職人であれば、自分のテーマを追究していて楽しいと感じています。売れっ子営業マンであれば、お客さんに喜んでもらえることが嬉しいと感じているはずです。  

 こういう感覚が必要なのは仕事だけでありません。野球少年なら、体を使う快感、あるいは野球というスポーツそのものに、おもしろさを感じられるかどうかが大事でしょう。株だったら、儲かる喜びを感じられるかどうか、なのかな……。これは儲かっている人に聞いたほうがよさそうです。  

 ともかく、その人が伸びるかどうかは、「快の感覚」があるかどうかです。したがって、優れたリーダーになれるかどうかは、リーダーとしての快を感じる能力があるかどうかにかかっているわけです。

第一章 リーダー感覚とケアリング

◆リーダーの三つの機能  

 リーダー感覚といっても、人によって受け取るイメージは様々でしょう。それでは困るので、ここで本書が扱おうとしているリーダー感覚のより具体的な説明を行います。

 リーダーを論じるとき、ある人は大企業のトップをイメージし、また、ある人は中間管理職をイメージします。これは自分の職位を中心に考えているからでしょう。当然、それらの意見は、業界とか業態、あるいは企業規模などによって大きく影響を受けます。    

 結局、世にあるリーダー論が千差万別になるのは、みんなが自分の立場でリーダーを考えているためです。ですから、それをほかの人間に適用するのは非常に難しいのです。  

 このあたりのところを十分に理解しておかないと、リーダー感覚といっても、実践に活用できないものを取り入れてしまう危険性があると、私は思っています。    

 そこで、もう少しリーダー論を整理できないかと思い、私はリーダーの機能についてまとめてみました。

 私はリーダーの機能を、非常に大雑把に、以下の三つの機能に分類しております。  

 第一は、集団目標の設定です。これはグループが何をしようとしているかを決め、それをメンバーに周知徹底させることです。  

 第二は、グループを管理する能力です。つまり、組織やチームの統治を行い、結束を高めることです。具体的には、各メンバーの役割(権限と責任)をはっきりさせ、メンバー間で混乱や対立が発生しないように監視し、仕事がスムーズに行えるようにすることです。要するに、フォーマルな仕組みづくりと考えて下さい。  

 第三は、ケアリングです。簡単にいえば、ケアリングとは仕事を通じて自己実現ができるように支援すること、といえるでしょう。つまり、仕事を通じて個々のメンバーの興味と能力を満たすように指導を行うことです。これには、状況にもよりますが、私生活上のアドバイスを行うことも含まれるでしょう。

◆職位によるリーダー感覚の違い

 今述べたリーダーの三つの機能は、リーダーの地位や組織形態によって、求められる内容が大きく変わります。また、三つの機能間の重要度も組織上の地位によってかなり異なってきます。リーダーのポジション別に、その関係を見ていきましょう。  

 まず集団目標の設定機能を考えてみます。トップの場合、この機能で求められる能力とは、構想力、先見性、戦略立案能力、意思決定力といったところでしょう。

 これに対して、係長クラスのリーダーには、戦略目標を自分の現場にふさわしい目標に落とし込み、メンバーに着実に実施させる能力が求められるでしょう。なお、係長レベルでは、集団目標の設定能力よりも、若い社員のやる気をいかに引き出すかといった、現場でのケアリング能力のほうが強く求められると思います。  

 一方、部課長のような中間管理職の場合は、管理能力がより重要になるかもしれません。特に、自分の部の仕事と他部門との連携・調整能力や、上司との交渉力などは非常に重視されるでしょう。

◆リーダー感覚はケアリングを念頭に  

 本書では、リーダー感覚を獲得するうえで、ケアリングを主眼に置いています。  

 今の時代、仕事が生活の糧(かて)のためにだけあると考えている人は少ないはずです。仕事を通じて成長したい、自己実現を図りたいと思っている人が多いのではないでしょうか。このような個人的欲求が満たされるようにすることは、リーダーにとって重要な仕事です。  

また、仕事で抱える悩みだけでなく、私生活に関するアドバイスを与えることも、リーダーとして必要なときがあります。 ケアリングというのは、範囲が非常に広く、ある意味、リーダーの人間性が問われるものであるともいえるでしょう。  

私はリーダー感覚を獲得するためには、ケアリングの面からアプローチするのがよいと思っております。 ケアリング能力を高めながらリーダー感覚を強化する方法は、効果が高いと思うわけです。  

◆リーダー感覚訓練の条件

 リーダー感覚をつかむうえで最も大事なことは、再三申し上げているとおり、リーダーとしての快を感じることです。リーダーには、ぜひ「人を導くときの快」を自覚していただきたいと思っています。  

 そこで、その感覚をどういった訓練で開発していけばよいかということが問題になってきますが、私は、リーダー感覚の訓練には、次の三つの条件が必要だと思っています。

 第一は、「人に関心をもてるようになる訓練」でなければなりません。このような条件を満たす訓練であれば、自ずと人間行動の観察が行われます。その結果、人間に対する観察力が養成されていくはずです。

 第二は、「相手になんらかの働きかけをしたとき、それに対する反応が理解でき、またそれについて分析できる訓練」です。これを別の言い方でいうと、「相手の行動を分析でき、相手の行動特性がつかめる訓練」ということになります。

 第三は、「相手との共感が得られる訓練」です。コミュニケーションというのは、相手との共感なしには成り立ちません。どんなに言葉を交わして理解したつもりでも、そこになんらかの共感がなくてはコミュニケーションは成立しません。共感というベースがあるからこそ、ときには言いたいこと、相手にとっては耳の痛いことも言えるのです。

 リーダー感覚を高める訓練には、このような条件が必要であると思いますが、とりわけ大事なのは、まわりの人に対して関心がもてるかどうかです。リーダーは人に仕事をしてもらって、成果をあげるのが任務なのですから、まわりに関心をもてなかったらどうにもなりません。

第二章 リーダー感覚の比較

◆リーダー感覚の違いと成果  

 リーダー感覚の訓練を行う前に、リーダー感覚について、もう少しみなさんに具体的なイメージをもっていただいたほうが、あとからの話が早いように思います。  

 そこでリーダー感覚の違いが、結果や成果にどういった違いをもたらすのか、実例をみていきましょう。幸いなことに、私は非常によい例を見つけました。野村監督と星野監督のリーダー感覚の違いです。  

 まずは野村さんから始めましょう。野村さんの優れた分析力と戦略観は、広く知れ渡っているところです。野村さんの手腕について、疑う人はほとんどいないでしょう。にもかかわらず、一九九九年から二〇〇二年の三年間、阪神監督として指揮をとった野村さんは、三年連続最下位という屈辱を味わいました。  

 それまで阪神が長い間低迷していたのは事実ですが、それにしてもあれほど実績ある監督が、信じられないほどの不振です。いったいどうしたというのでしょう。 しかも、そのあとを受けた星野監督は、阪神を就任二年目に優勝に導いてしまったのです。どうしてこんな違いが生じたのでしょうか。  

 これは格好の分析材料だと私は思いました。そこで、私は野村さんと星野さんの著書に目を通し、どこが両監督の違いだったかを検討してみました。その結果、いくつかの理由が見つかりましたが、とりわけ二人のリーダー感覚(リーダーシップ・スタイル)の違いが大きく影響したように思われます。

第三章 リーダー感覚とは何か?

◆訓練は素振りから  

 本やセミナーで学ぶのは理論ですね。野球にたとえれば、バッティング・フォームの解説書のようなものでしょう。 それを読んだだけで、いきなり公式戦に出て、ピッチャーの球を打てといわれても、それは無理というものです。  

 それなら、どうすればよいか。野球なら「まずは素振りをしなさい」といわれるはずです。それで、素振りをある程度こなしたら「緩い球を打つ練習をしなさい」とアドバイスされるでしょう。  
 
 私は、リーダーシップの訓練でも「素振り」が必要だと思っています。いきなり、実戦で球を打てといったって、経験の少ない人には荷が重すぎます。  

 要するに、リーダー感覚をまず高めてから、リーダーシップを発揮しなさい、ということです。そして、これは頭で考えるだけでなく、身体感覚として身につけるべきだと思うわけです。勉強をするときは、文字どおり、身につけることが大事です。

 ですから、このあとに出てくる私の訓練方法では、身体、特に眼と口を十分使っていただきたいと思います。

 では具体的にどうしたら「素振り」ができるでしょうか。いちばんよい方法は、リーダーになる前から、リーダーの「素振り」をすることです。「エーッ、リーダーになる前から、なんでリーダーの練習なんかできるんだよ」と驚いてはいけませんよ。これは頭の問題。もっと柔軟に考えないとね。

 それには、ほめる訓練をするのがいちばんよいと、私は経験上申し上げたい。

◆ほめる訓練の優秀さ

 ところで、なぜ私がリーダー感覚養成のためにほめる訓練を選んだかですが、この方法が優れているのは、自然に人を観察するようになるからです。その人のよいところを見つけようと、虎視眈々と狙っていくわけですから、いやでも相手のことに関心を払わないわけにはいかなくなりますね。

 また、ほめるときは、相手にとって最適な言葉を選ぶ必要がありますが、それには相手の心がある程度わからないといけません。ですから、相手の気持ちを察する訓練にもなるわけです。

 それから、もしほめ言葉がピッタリであれば、ほめられた人は喜んでくれるでしょう。そうなると、こちらとしてもたいへん嬉しいし、愉快になりますね。つまり、相手が喜ぶことで、自分も喜びを感じることができるわけです。これが共感です。

 ほめる訓練は、人間関係の機微がよくわかると同時に、人を指導する喜びも味わえます。この喜びの感覚こそ、リーダーが知らなければならないリーダー感覚なのです。

第四章 リーダー感覚の初等訓練

◆ほめる技術を磨く  

 前章では、ほめる訓練について基礎的なところを押さえました。これだけでも、かなり効果はあるはずです。しかし、これはあくまで基礎訓練であり、野球でいえば素振りの段階です。もっとも、素振りを馬鹿にすることはできません。基礎は非常に大事で、何か問題が生じたら、いつもここに戻ってくるとよいでしょう。  

 さて、この章では、ほめる技術をさらに磨くことを考えます。ほめるときには、いろいろな方法がありますから、その技術をご紹介してまいりましょう。  

 それが終わりましたら、次は認める技術について説明します。これまでは、ほめることと認めることを一緒くたにして扱ってきました。けれども、厳密にいえば、両者には違いがあります。

 私の考えでは、認める技術というのは、相手の新しい能力を見出してあげることです。ほめることが表に見えている優れた面を指摘するだけであるのに対し、認めることとは、相手が気がついていない隠れた能力を発見することなのです。  

 では、さっそくリーダー感覚の初等訓練を始めましょう。初等といっても、このレベルをマスターできれば、大半の問題には対処できます。それぐらいの価値はあると、私は思っています。


第五章 リーダー感覚の中等訓練

◆より厳しい状況下の訓練

 これまで、よい行為や優れた特質を認め、それをほめる訓練を行ってまいりました。これによって基本的なリーダー感覚は得られたと思います。また、このリーダー感覚によって、相手の承認欲求はかなりの程度まで満たされたはずです。

 この章では、前章までに学んできた「ほめる技術」と「認める技術」をさらに進め、より高度な承認欲求に対応するための訓練をし、それを通じてリーダー感覚を一層深めていくことでした。
 
 ここでいう高度な承認欲求とは、潜在意識レベルでの欲求をさします。これに対応するためには、潜在意識についての理解が必要です。たとえば、何か仕事で重大な失敗をしたり、思うように事態が進まない人のケースがそうです。  

 こういうときには、気がついたところをただほめたり認めるだけでなく、相手の潜在意識の欲求に配慮しながら、言葉を投げかける必要があります。ですから、この章の主要テーマは潜在意識に働きかける訓練になります。  

 そこで、潜在意識において非常に重要な役割を果たす観念に関する説明をいたします。つまり、観念こそが人間行動を決めるのだ、ということです。そして、その観念を変化させるためには暗示技術が有効であるということを説明いたします。

 

 その暗示ですが、暗示にはいろいろなパターンが存在します。この章では、そのなかでも比較的簡単にマスターでき、応用範囲の広い基本型1を紹介いたします。これは、相手が非常に厳しい状況、不安な状況にある場合に用いる暗示です。  

 不安のような観念を壊すには、それを全面的に否定するのは間違いで、観念の一角を壊すことが肝要です。そうすると、そこから観念がボロボロ崩壊していくわけです。これが暗示の基本型1が狙っている戦略なのです。

 このような暗示を使う場合、機・度・間をうまく用いると、さらに効果を発揮します。平尾さんの事例はみなさんにとって、たいへん参考になったと思います。

◆説得の作法  

 さて、ここからいよいよリーダー感覚の訓練のなかでも、中等技術と呼ぶにふさわしい高度な訓練に入ります。私はこれを説得の作法と呼んでおりますが、これを訓練していきましょう。

 説得の作法では、今まで述べてきた、ほめる技術、認める技術、暗示技術などを要所に取り入れていきます。そういうものを用いながら、厳しい状況の人をなんとか助けてあげる訓練をしたいと思います。

第6章 リーダー感覚の高等訓練

◆欠点を指摘するのは難しい

 リーダー感覚を実感するには、指導する楽しさを感じるのがいちばんよいと、私は思っています。その点、人をほめる行為は、相手が喜ぶことが多いですし自分も楽しい。それで、これが訓練の基本になると思うわけです。

 これに対して欠点を指摘するのは、非常に難しいものです。なぜならば、それによって非常に反発したり、逆に大きく落ち込んでしまう人が出てくるからです。

 そういう理由から、私は欠点を指摘する訓練や叱る訓練を、最高に高度な高等訓練と位置づけました。  

 なお、この章では、欠点を指摘する訓練と、叱る訓練を一緒に扱っています。両者はまったく同じというわけではありませんが、共通する面が多々あるからです。まず、どちらも相手の問題点に焦点を当てていきます。そして、それを指摘した反応が反発を招きやすいという点でよく似ております。そこで、両者をまとめて扱ったほうがよいだろうと考えました。

第七章 リーダーの条件

◆リーダーと部下の関係について考える

 前章で欠点を指摘する訓練や叱る訓練をいたしましたが、このような場合、リーダーの人間性が非常に重要であるということがおわかりいただけたと思います。また、リーダーと部下との良好な人間関係も、指導力に大きく影響することがおわかりいただけたでしょう。

 では、リーダーと部下の関係を良好に保つにはどうすればよいでしょうか。私は三つのことを考える必要があると思います。
 

 第一は、部下に対する理解です。相手のことがわからなければ、よき人間関係をつくるのが難しいのは自明です。

 第二は、リーダー自身の人間性や魅力です。

 第三は、リーダーと部下の関係のあり方です。

 これまで、このような点について、本書では明確に論じてきませんでしたので、この章でまとめて述べようと思います。ただ、本書ではスペースの関係から、第一の「部下に対する理解」については扱うことができません。いずれ機会があれば、まとめてみたいと思っていますが、どうしてもお知りになりたい方は、「感受性」を研究して下さい。これについては、第四章の1節を参照してください。

 次に、第二の「リーダー自身」の問題です。私はこれに関して、三つの問題を提起したいと思います。一つめは、リーダー感覚の成長についてです。歳を重ねるにつれて、リーダーは成長していきますが、そこにどういう課題があるのかを示そうと思います。二つめは、リーダーの自発性です。私は第一章で、人間にとって自発性の欲求が最も重要な欲求であると述べました。そこでリーダーとして自発性をどう考えるべきか、説明したいと思います。三つめは、リーダーの魅力です。リーダーは人を引き付ける魅力が必要です。それはいったいどういったものなのか考えてみました。

 最後に、第三の「リーダーと部下の関係のあり方」ですが、これについては、部下に対してリーダーはどう向き合うべきか、どのようなスタンスで臨むべきか、といった観点から説明したいと思います。


目次

目次一覧   
はじめに
序章
リーダー感覚の必要性
  1感覚とは何か
     上達するには感覚が必要
     画家の眼
     感覚がないとどうにもならない
     感覚とは快を感じること
     どこが暗示なのか
     リーダー感覚がないとどうなるか
  
第一章
リーダー感覚とケアリング
  1多様なリーダー論とリーダー感覚の関係
     リーダーのイメージ
     リーダーのあり方
     まだまだあるリーダー論
     リーダーの機能
     職位によるリーダー感覚の違い
     御手洗会長兼社長の自発性発揮論
     トップの関心事
     ほかのタイプのリーダーは?
     リーダー感覚はケアリングを念頭に
     リーダー感覚訓練の条件
  2リーダー感覚の根源
     承認欲求
     パットン将軍の巧さ
     人は何を認められたいのか
     自発性を認める
     リーダー感覚を磨こう
              
第二章
リーダー感覚の比較
  1野村監督のリーダー感覚
     リーダー感覚の違いと成果
     ほめない監督
     選手をほめない理由
     ほめるのはそんなに難しいことか?
     野村流指導法に合う人・合わない人
     野村野球の申し子
     おだてにのる人もいる
  2星野監督のリーダー感覚
     星野監督の阪神選手分析
     星野監督のもとで今岡が伸びた
     無理な我慢は健康に悪い
     野村流リーダーシップの弱点
     星野さんのリーダーシップ
     阪神球団の改善策
     変化する野村監督
                
第三章
リーダー感覚の基礎訓練
  1訓練の要旨
     訓練は素振りから
     リーダーになる前から訓練する
     ほめる訓練の優秀さ
  2ほめる訓練
     一週目の訓練
     二週目の訓練
     人間関係の改善にも有用
     事例
     実践のみが有効
        
第四章
リーダー感覚の初等訓練
  1ほめる技術を磨く
     この章の目的
     ほめる技術の体系
     手段の選択――ほめるタイミング
     ほめる方法の選択――直接法
     ほめる方法の選択――間接法第一・間接法第二
     ほめる方法の選択――間接法第三
     彼我の人間関係を理解してほめる
     相手が自分より知識や経験が豊富なとき
     相手の感受性について
     ★やってみよう――ほめる訓練(初等レベル)をする
  2認める技術
     ほめることと認めることの違い
     人間を観るセンス
     長所を活かす教育
     事例 ある外資系企業の場合
     自信を失った後輩を励ます
     ★やってみよう――認める訓練をする
  3いくつかの注意
     言葉に惑わされないように
     言葉と態度の観察
     腹から出る言葉が大事
    
第五章
リーダー感覚の中等訓練
  1潜在意識と暗示の知識
     より厳しい状況での訓練
     訓練の前提としての「暗示学」
     観念と人間行動のメカニズム
     性格という観念
     教育も刷り込まれる
     過去の観念を切り離したリーダー
     信頼感が消えるとき
  2暗示を使って長所をほめる
     暗示とは何か
     暗示の基本型1
     めげていた営業企画部員への暗示
     どこが暗示なのか
     寝たきりのおじいさん
     悩んでいる同僚へのアドバイス
     ★やってみよう――暗示基本型1の訓練をする
  3機・度・間の重要性について
     機について
     度について
     間について
     平尾さんの暗示について解説してみる
     世阿弥と中断の技術
     クイズ――山本五十六の語録
  4説得の作法の訓練
     これまで学んできたポイント
     説得の作法
     ありふれていない作法
     脱サラをやめた人
     何を暗示したのか
     野球好きの高校生の英語勉強法
     ★やってみよう――説得の作法を訓練する
  
第六章
リーダー感覚の高等訓練
  1欠点を指摘する訓練
     欠点の指摘と叱ることの共通点
     欠点を指摘してもよい条件
     欠点や障害をひとつ指摘する暗示
     基本型2の暗示の特徴
     切れたリンク
     美しいと思っている人への暗示
     ★やってみよう――改善点を指摘する訓練をする
  2叱る訓練
     彼我の特質を考えて叱る
     信頼関係があれば叱れる
     格好だけ真似ても無理
     叱るときの気持ち
     叱るだけのリーダーは使えない
     ★やってみよう――叱る訓練をして分析する
  
第七章
リーダーの条件
  1リーダー感覚の成長と壁
     リーダーと部下の関係について考える
     三十代症候群
     四十代症候群
     五十代症候群
     人間の成長過程
     体と心から学ぶリーダー学
     リーダーの課題
  2リーダーは自発性を発揮せよ
     自発性という感覚
     自発性の感覚をどうやって育むか
     自分に向いた仕事に出合えていないとき
     簡単なことを実行する
     わかっているのに、好きなことをやらない人
     自己責任を貫く
     決断と選択の違いを理解する
     背水の陣を考える
  3リーダーの魅力
     リーダーの魅力の要素
     人間の勢いは探究心から生まれる
     納豆に対する探究心
  4リーダーとしての立場を保つ
     いかに部下と向き合うべきか
     支配を求めない
     常に自発性を求める
     マニュアルはよい教育手段か?
     部下と競争しない
     部下の成長を願う
     人の心がわかる
     自分が悩まなければ、人の心がわからない
                 
あとがき

  





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