管理者・リーダーのための褒め方・叱り方『苦手意識を克服する!上手な叱り方のコツ』

本稿は「介護人財育成+プラス2008年7・8月号特集」に寄稿したときの元原稿の一部です。
雑誌の内容は校正が入り多少違いがありますが、おおむね同一のものです。
 
タイトル:苦手意識を克服する!
   上手な叱り方と反感をもたれる叱り方

               

なぜ叱ることが苦手なのか

1)叱ってよい相手を見極められない罪

「叱るのは苦手だ」と言うリーダーは多いようです。それもそのはず、叱ることはとても難しいことなのです。なぜ難しいのでしょうか。

 以前、このことについて介護関連事業を行っている会社の社長さんと話をしたことがあります。彼はこんなことを言っていました。

「自惚れている人を見ると、時々叱るようにしています。得意になっている人に一喝すると大きく伸びるからです。でも、失敗してめげている人にダメだと言って叱ると、ただでさえ悲観しているのに、ますます落ち込んでしまう。だからそういう人には怒ったり、叱ったりしないようにしています」

 さすがに、苦労人だけあって、人間のことがよくわかっているなと思いました。彼の言葉には、叱る場合のポイントが凝縮されているような気がしました。

 叱られて気分のいい人はおりません。ですから、叱られても、それを受け入れられるだけの心の持ち主でなければ、叱る効果はないと考えるべきでしょう。

2)叱ることと怒ることの区別ができない罪

「叱ることと怒ること」の区別がつかないことも、叱ることを難しくしています。

 理由も説明せず「お前のやり方ではダメだ」と、頭ごなしに怒鳴りつけるリーダーをよく見かけます。これでは指導になりません。しかも、こういう人は、たいてい「お前がなんとかしろ」と言うだけで、具体的な対処方法を示しません。本当は自分自身でも問題の解決法がわからず、イライラや不安を発散させたいだけなのです。こういうリーダーは、部下にとっては災難以外の何ものでもありません。

 ノルマ達成とか計画達成の期待が上層部からのしかかっているリーダーのなかには、自分の思うように動かない部下に対して大声で怒鳴りあげる人がいます。部下の方は、リーダーの都合や保身からくる行為だと見抜いていますから、その場では平身低頭していますが、腹の中では馬鹿にしています。

 部下と競争して勝とうとするあまり、部下を叱りつけるリーダーも時々見かけます。「あいつの介護方法ではダメだ」とか「規則を守らず勝手なことばかりしている」と、やり手の部下を批判して、自分の優位性を誇示しようとするのです。部下と競争するのは、リーダーとして自信のない証拠です。

 以上述べてきたリーダーのケースは、不満の捌け口を部下に向け、鬱憤を晴らそうとする行為です。このような行為は「叱る」こととは別次元です。

適切な叱り方

1)性格を考え、叱るべきかどうか決める



2)叱る程度を加減する



3)叱るタイミングを考える



4)気の弱い人への言い方

5)リーダーとしての心構えと日ごろの信頼関係

 冒頭に取り上げた社長さんは、もともとは気の短い人で、若いころは部下をよく叱ったそうです。しかし、いまではほとんど叱ったり怒ったりすることはありません。ただし、例外が一人だけいるそうで、その人だけは叱ります。

 社長はその人を非常に評価し、眼をかけているからこそ叱るのです。そのことは部下もよく承知していて、両者の間には深い信頼関係があります。しかし、そういう間柄でも、たまには激しく言い合うことがあります。このときばかりは気まずい雰囲気になりますが、そんなときには社長の奥さんがすっと出てきて間に入るようです。しかもそのタイミングが抜群だとか。このように、叱るとき第三者をうまく使うことはたいへん効果があります。

 また、大声で叱った日の晩には、一緒に飲みにいってフォローをすることもあるそうです。もちろん、その席では、昼間のことなど蒸し返したりはしないで、さっぱりしていることが大事です。

 社長さんとお話をしていて、彼の言葉の背後には「部下に成長して欲しい」という願いがあることに私は気がつきました。それは「自分の思うように動いて欲しい」という欲ではありません。

 私は、人を叱る場合には、それなりの冷静な計算が必要だと思っています。その冷静さを保たせるのは、リーダーとしての責任感であり、部下を成長させたいという思いです。リーダーの立場にある人は、部下に成長してもらいたいと本気で思っているかどうか、常に自らを振り返る必要があります。そういう気持ちでなければ、どんなに美辞麗句を用いても部下はついてきません。

 おもしろいもので、部下の成長を願って接しているリーダーであれば、たとえポンポン荒っぽい言葉をかけたとしても部下はついてきます。結局、人間関係というのは言葉ではないのです。「自分のことを真剣に考えてくれているんだ」という信頼関係があれば、厳しい忠告でも部下は必ず聴いてくれます。

6)危険な行為をしたときは直ちに叱る

 工場では、怪我をするような危険な行為があると、なぐってでもそれをやめさせようとします。命を守るためには、それもやむをえません。

 介護現場でもそういうことがあるのではないでしょうか。顧客、利用者、あるいは介護スタッフなどの身体に危険が加わるような行為は、直ちにやめさせなければなりません。想定されるケースに関して朝礼などで説明し、「そういうときは厳しく注意する」とあらかじめ言っておけば、反発を招くことはないでしょう。

7)チェックリスト

 ご参考までにチェックリストを用意しました。部下を叱る前にお読みください。また、叱ったあとで、自分の行動を分析してください。
「添付資料p.3挿入」

参考文献
1)佐藤直曉:リーダー感覚――人を指導する喜び、鳥影社、2007年
2)佐藤直曉:リーダーの暗示学、鳥影社、2005年

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※内容は、拙著『リーダー感覚』を中心に、『リーダーの人間行動学』『リーダーの暗示学』『伝動戦略』のなかのポイントを広くまとめたものです。私の本はそれぞれが互いに関連し合っています。
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プロフィール
佐藤直曉(さとうなおあき)
慶応大学管理工学科修士、スタンフォード大学経営学修士(MBA) 。ボストン・コンサルティング・グループおよび野村総合研究所にて企業戦略コンサルタント。独立して、企業コンサルタントおよび老人介護事業・高齢者福祉の調査を行う。現在は、リーダー教育を中心とした著述業。ホームページ http://lken-leader-school.com/

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