説得・交渉のスキル

記事要旨

以下は『主任&中堅+こころサポート2012年7・8月号』に私が投稿した内容です。

日総研出版のPR紹介サイトでは、すでにリンク切れになっていますので、こちらで冒頭の部分をご紹介します。なお、原稿のままですので、最終版では変更がありました。

☆特集 頭を柔軟にして主任業務に取り組む!「論理的思考」活用術
なぜあの人には説得力があるのか?
主任に求められる「説得・交渉」のスキル


          
1リーダーにはなぜ「説得・交渉」のスキルが必要か
◆リーダーの立場を保つ
 説得・交渉のスキルをご説明する前に、リーダーとは何か、リーダーはどのような心構えでいるべきかを簡単にご説明しておきます。ここをはずしますと、何のために勉強するのかが分からなくなりますので、基本的なことすぎて面倒かも知れませんが、辛抱してお読みください。

 そもそも、リーダーとは一人では成り立たない仕事です。人に働いてもらってはじめて機能する仕事です。ですから、リーダーが考えなければならないことは、いかに部下に向き合うかということになるでしょう。私はこれを「リーダーの立場を保つ」と呼んでいますが、特に次の点には気を使うべきです。
①支配を求めないこと
②部下と競争しないこと
③部下の成長を願えること

 リーダーが部下を支配することはそれほど難しくありません。権限が与えられていますので、部下に行動を強制できます。しかし、その権限や権力を支配に向ければ、当然反発が起きます。あるいは、表面的には反発は起きなくても、腹のなかでは部下は舌を出しているでしょう。こういう態度をとらせてしまうことは、結局は部下の意欲に悪い影響を与えます。

 次によくないのは、自分よりできる部下を批判して、それによって自分の地位を保とうとする行為です。それが部下と競争する、という意味です。これもよく見られるリーダーの欠陥です。仮にある技術において部下が自分より優れていたとしても、それはリーダーの価値を下げるものではないと知るべきです。なぜならば、リーダーと部下は同じレベルの仕事をしているわけではないからです。部下を批判するのは、自分が部下と同列にいることを意味し、リーダーとしての仕事を理解していない証拠です。

◆求められる説得・交渉のスキルとは
 リーダーは結局のところ、部下の成長を願えるようでなければいけないと私は思います。この気持ちが足りないと、どうしても支配を求めたり、部下と競争するような過ちを犯してしまうのではないでしょうか。

 さて、このようなリーダーの立場を保つためには、どのようなスキルが必要でしょうか。そうです。それは、自分の考えを部下にうまく伝えながら、一方で部下にも気持ちよく動いてもらえるようにするスキルです。説得・交渉のスキルもその一部だとお考えください。

 なお、これから行うスキルの説明は、部下を想定しておりますが、部下だけでなく上司、同僚、取引相手などにも応用できますので、置き換えてお読みください。
 
2説得・交渉のスキルの基本
◆説得・交渉の理論化
 説得や交渉能力は、一般にはアート(専門的技術・技巧)の部類に属し、個人の才能に依存すると思われています。しかし、これを理論化し、ある程度誰でも使えるように一般化することは可能であると私は考えています。理論化のためには、有能な実践家の行動を分析し、学ぶことが必要です。

 十七世紀後半、ルイ十四世の下で外交交渉家としてならしたフランソワ・ド・カリエールという人物がおります。カリエールの著書『外交談判法』(岩波文庫)は、十八世紀の外交官たちから教科書とされ、アーネスト・サトーからも「政治的叡智の宝庫」と絶賛されています。

 この本は国家間における交渉を説明していますが、現代社会の一般的な交渉でも十分通用するものです。カリエールは本のなかで、説得術に関して次のように述べています。

「交渉において最も確かな方法は、交渉の相手方が、こちらの提案を自分にとって有利だと思うように仕向けることだ」

 そして、そのためには「まず彼らの自尊心を満足させるために、彼らが前にしたこと、考えたことを正当化できるように理屈を並べてみせる」
「(そうしてから)彼らの考えや行動を変えさせるために、彼らの利益に基づいたもっと有力な道理を示す技術が必要である」

◆感情面にも配慮する説得プロセス
 自分が間違っているとわかっていても、それを道理で示されたとき、自分が間違っていましたと白状したい人間などあまりおりません。しかし、「ある点でひとが賛成してくれると、別の点で自分の意見を捨てることのできる人ならばおおぜいいる」とカリエールは言います。

 そこでまず相手の言っていることや、やってきたことを評価し、自尊心を満足させ、それからこちらの提案をすべきだ、とカリエールは主張するわけです。

 それに加えて、カリエールは、相手を評価するときに、積極的にほめることを推奨しています。これは自尊心を満足させるよい手段です。カリエールの交渉相手は君主が多かったので、彼は君主のほめ方について以下のように語っています。

「君主の富を褒めたり、彼らの館、家具など彼らの値打ちとは関係のないものを褒めるような暇つぶしは適当にして、彼らにとって本質的な称賛に値する事柄こそほめるできである。たとえば、彼らが偉大で勇気があり、公正で、控えめで、寛大で……彼らの才能、頭のよさ、思慮分別、根気とかを褒めるべきである」

 このあたりが、説得のプロセスのなかで、人間感情の難しさを処理する場合のポイントでしょう。
 
3交渉の基本パターンと特徴
◆3つのステップを踏む
◆班長の実践例

4理屈が通じない人・感情が通じない人への説得・交渉のポイント
◆説得は相手に合わせる必要がある
◆相手の価値観に合った説得の事例
◆目に浮かぶように話す

※内容は、拙著『リーダー感覚』を中心に、『リーダーの人間行動学』『リーダーの暗示学』『伝動戦略』のなかのポイントを広くまとめたものです。私の本はそれぞれが互いに関連し合っています。
詳しく学びたい方は書籍をご参照ください。
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本稿は「介護人財育成+プラス2008年7・8月号特集」に寄稿したときの元原稿の一部です。
雑誌の内容は校正が入り多少違いがありますが、おおむね同一のものです。
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